「千幸、消しゴム忘れた貸して」


トントンと肩を叩かれて、後ろを向くとそう言った忍くんが手を伸ばしていた。


「うん、いいよ!」


筆箱に入っている予備の消しゴムを渡す。


「ありがとう」と返事をした忍くんは引き続き勉強を続けていた。


そして数分後……。


「千幸ちゃん、ここわかんないんだけど、教えてくれる?」

「ん?ここはね、こう言うふうに計算すればいいんだよ」


四条さんにそう聞かれたので、そう答えて行った。


「そうやればいいんだね、千幸ちゃんはすごいなぁ」

「あはは……そんなことないよ、四条さんのドレスの方が——」

「綾人。綾人って呼んで?」

「え、えっと……綾人くん?」

「うん、それでいい」


嬉しそうに微笑んだ綾人くん。

そして……なぜだか、忍くんからすごく見られているような気がした。