「いくら黒瀬さんの言うことでも、妹は今調子が悪いんです」

「……」


み、見破られてる……!?私が元気でただ気まずくて隠れてるだけだって……。


だってあんな、後ろから自分に抱きついてきた人と再会してしまって、しかもその相手が超お金持ちだったなんて、気まずいに決まってる。


だけど、これ以上お兄ちゃんに迷惑をかけるのも申し訳ない。

またお礼も言いたかったので、勇気を振り絞って姿を見せることにした。


「あ、あの……すみません……お話って、なんでしょうか……」

「椎名さん。少し、2人きりになってもいいでしょうか」

「へっ?2人きり……?」

「綺麗な庭があるんです」

「え、えっと……」


ど、どうすれば……。

お兄ちゃんの方を見上げると、威嚇する犬のように黒瀬さんを睨んでいた。