「ちゆ、くじ何番だった?」


 席替えのくじを引き終えた奈美ちゃんが聞いて来る。


「29番だよ」

「えー? あたし19番だよ。ちょっと席離れちゃったね」


 残念そうに肩を下ろした奈美ちゃんに、私も残念だなって思う。

 でもひとつ席を挟んで横並びだから、そこまで離れていなくてホッとした。

 それに、多分私の隣は……。


「また隣だね。またしばらくよろしく、浜田さん」

「……田中くん」


 くじも終えて、私の隣の席に来たのは佳くんだった。

 あれから数日たったけれど、私たちが付き合っていることはみんなには内緒にしている。

 いきなり付き合いましたって言って、なれそめとか聞かれたら困るからって佳くんと話して決めたの。

 だって、私たちがエスパーだってことはもちろん、佳くんの家の家業についてもヒミツらしいから。

 うっかり話してしまわない様に、付き合ってることもヒミツにしてるんだ。


 まあでも、奈美ちゃんにはそのうちちゃんと話しておきたいなって思ってる。


 隣の席に座った佳くんは、頬杖をつきながらニコニコと私を見ていた。


「また浜田さんの隣で嬉しいよ」


 まだ席を移動している人がいるから、いつものように佳くんとの間に人垣は出来ていない。

 そのおかげで教室でも話が出来る。

 それは嬉しいんだけれど、私は今ちょっと呆れてるんだ。