「テシュール湖に⁉」
「例え本当に毒を盛ったのだとしても、そのような処刑など!」

 フリッツを非難する声が多いのも当然だ。
 水死体は醜い。故に貴族女性の処刑としてはあってはならない処刑方だった。
 裁判にもかけず、そのような方法で処刑したとなればもはや頭がおかしいというレベルだ。

(処刑のことまで口になさるとは思わなかったわ……)

 頭がおかしいと誰もが思う行為だ。
 湖に沈めたことは黙っているだろうと思っていたが……フリッツは本当に何を考えているのだろう。

「ティアリーゼ、そろそろ出た方がいいのではないか?」

 そっと声を掛けられ、ハッとする。

「このままだとお前は本当に死んだことにされてしまうぞ」
「そう、ですわね。……行きます」

 少々想定外もあったが、今は当初の目的通り冤罪を晴らすのが先だ。
 ティアリーゼはストラのエスコートで、会場の中心へと足を進めた。