「そう……辛かったわね」

 ティアリーゼは痛ましい思いをその一言に乗せ、飲んでいたティーカップを静かに置いた。
 メラニーがそういう人物だと分かってはいたが、自分の側仕えにすらそのような仕打ちをするなど……。
 貴族という、平民の上に立つ者としてあり得ない。
 怒りすら湧いてきて、ギュッと眉間にしわを寄せた。
 そんなティアリーゼに、エリーがおずおずと口を開く。

「それであの……ティアリーゼ様はどうして私を助けに? 何よりメラニー様は貴女様を陛下達が戻ってくる前に処すると言っていました。何事もなかったのですか?」

 ある程度の予測はしているだろうが疑問点も多いのだろう。
 疑問解消のために聞かれた言葉に、ティアリーゼは出来る限り正直に答えた。

「そうね、冤罪を着せられた私はテシュール湖に沈められたわ。でもこの方が――ストラ様が助けてくれたのよ」

 ストラに視線を向け、簡単に紹介する。
 偽名を使った方がいいかとも思ったが、ストラ自身がどうせ神だとは気付かないだろうからいらないと言ったのだ。