だが、ティアリーゼ本人の口から側で仕えたいとの言葉が出た途端自分の中に欲が生まれる。

 愛しい娘。
 美しく成長した少女が、自分の側にいたいと願った。
 それは、とても甘美な誘惑でもあった。
 ティアリーゼが側にいてくれる。
 柔らかな金の髪をいつでも撫でることが出来る。
 白く華奢な手に、いつでも触れることが出来る。
 その誘惑に頷きそうになったが、このまま神々の国に連れて行っもは彼女は十年と持たないだろう。
 そんな短い間しか共にいられないのなら、頷くべきではない。
 だから首を横に振ったというのに、ティアリーゼはそれでもいいと言い出した。

 ならば、方法は一つしかない。
 自分とティアリーゼ、どちらの願いも叶えようとするならば彼女が聖女となり神籍に入る以外にない。
 そして、どうせ神籍に入り神と同等の存在になるのならば、側仕えなどにする必要もない。
 それならば、側仕えよりもっと近しい――自分の妻という立場になってもらいたいと思った。

 いつでも彼女に触れていい権利。
 触れるだけではなく、抱き締め、口づけをしてもいい権利を有する彼女の夫になりたいと思ったのだ。

 戸惑い固まってしまったティアリーゼに、少し卑怯だと思ったが妻にと望み頷かせた。
 ちゃんと理解出来ていたかは定かではないが、言質(げんち)は取った。
 後からどうしても嫌だと言うのならば、仕方ないと初めの要望通り側仕えにと変えただろうが……。