「だが、万が一ということもある。……何より、一時たりともティアリーゼを一人にはしたくないのだ」

 ティアリーゼから目を離さずストラは淡々と答える。
 声の抑揚の無さに比べて、その眼差しには柔らかな色が浮かべられていた。

「……主は本当にティアリーゼが好きなのだな」

 またしてもため息付きで発せられた言葉に、ストラは初めてフェニックスの方を見た。
 その視線はジトリと少し湿っている。

「ああ、好きだが? だがお前とて好きだろう?」
「それはもちろん。美しい名を頂きましたし」
「……否定はしないが、今のお前には可愛らし過ぎるのではないか?」

 美しい名であるとはストラも思う。
 だが、どちらかというと雌に付ける名ではないだろうか?
 小鳥の姿ならばまだしも、豪華な羽をもつ誇り高そうなフェニックスには愛らしすぎるだろう。

「少々可愛らしいくらい問題ありません。……念願の名がもらえたのですから」
「……それは皮肉か?」
「そうですな。主である貴方はいつまで経っても名をつけてくれませんでしたから」

 羽繕いしながら皮肉たっぷりに告げる鳥にフンと鼻を鳴らしたストラは、視線をティアリーゼに戻し顔にかかっていた髪を寄せてやった。