「ティアリーゼ様! 私、あなたを貶める手助けをしてしまいました。ですが本意ではないのです!」
「待て」

 必死に伝えようとしてくるエリーをストラが片手を上げて制止する。

「ティアリーゼは慣れない治療で疲弊している。休ませてくれ。……そちらも状況を把握する時間が必要だろう?」

 淡々としたストラの言葉に、フロント氏が一先ず落ち着きを取り戻した。

「そうですね。客間に案内させます」

 ベルを鳴らし人を呼んだフロント氏は、ティアリーゼに向き直る。
 そして深々と頭を下げた。

「娘を治療してくださり、ありがとうございました」
「いえ……目覚めて良かったです」

 このまま話をして協力を取り付けるつもりだったが、どんどん強くなる頭痛にそれもままならない。
 ストラの言う通り休息が必要だった。

 何とか笑みを浮かべて応えると、ストラがティアリーゼの体を抱き直す。
 耳元に唇を寄せ、囁いた。

「今は何も考えず休め。……よく、頑張ったな」
「ストラ様……」

 いたわりの言葉に胸が温かくなる。
 ストラに褒められたことが、他の誰に言われるよりも嬉しい。

 頭が痛くて意識も朦朧とする中、ティアリーゼは喜びを胸に意識を手放した。