「では、失礼いたします」

 断りを入れて祭壇の前に跪く。
 祭壇にある小ぶりな神像は五柱の大神以外に水の神の眷属、(あきない)(がみ)ヘンラーのものがあった。
 商人の家らしいセレクトだ。

「ハイリヒテルの偉大なる神々に祈りを捧げます」

 宣言をし、神々に祈りを捧げる。
 今回は神官であるという証明のためなので大げさなものは必要ないだろう。
 この家のために祈るのだからと商神ヘンラーへの祈りに聖霊力を乗せた。

 神官とそうでない者の祈りには明確な違いがある。
 神官の祈りの方が神に届きやすく、神が受け取る聖霊力も多いらしい。
 そのためか、神官の祈りには返礼の祝福があるのだ。

「……おお、祝福が」

 フロント氏の感嘆の声と共に、自身の周囲にキラキラと光が見えた。
 商神ヘンラーからの祝福だ。

 ティアリーゼはストラからのこの祝福が欲しくて神官になりたかったのだ。
 今朝、早速日課であるストラへの祈りをしたとき祝福を受け、幼子のようにはしゃいだのは自分とピューラだけの秘密だ。

 祈りを終え立ち上がると、フロント氏が深く頭を下げた。

「確かに神官様とお見受けした。エリーを診て頂きたい」