「ええ、構いませんよ。まずはこちら、神官の衣です。……あとメダルがあればいいのでしょうが、私つい最近神官になったばかりで制作中なのです」

 荷物から神官の衣を出して見せ、メダルをまだもらっていないことを話す。
 神官のメダルは名が刻まれており、偽装防止のため特殊な製法で作られている。
 神官であることの一番の証明になるのだが、昨日神官になったばかりのティアリーゼのメダルはまだ制作中だ。
 どうしましょう、と頬に手を添えて他の方法を考えていると、今まで黙って隣に座っていたストラが口を開いた。

「神官は神に祈りを捧げる者だ。少しこの家のために祈ってやってはどうだ?」
「それもそうですね」

 逆を言えばそれ以外に証明出来るものはない。

「ご主人、この家の祭壇はどこにあるでしょうか?」

 神に祈りを捧げるのは日常的なこと。
 平民で個人の家に祭壇まであることは珍しいが、豪商とも言えるこの家ならばあってもおかしくはない。

「あ、はい。こちらに」

 客間を出て案内された先には、簡素ではあるがちゃんとした祭壇があった。
 ピューラにストラの方へ行ってもらい、ティアリーゼは神官の衣を服の上から羽織る。
 神官の衣は前開きで、前を止めるとコットのような形状になる。
 ドレスの上からは無理だが、平民服のワンピースの上からなら問題なく着ることが出来た。