硬直してしまったティアリーゼから手を離すと、ストラは感情の読み取れない表情に戻り「さて」と手を差し出す。

「冤罪を晴らすのだったな。私も共に行こう」

 何故それを知っているのかと一瞬思ったが、ピューラを通じてこちらの状況を把握している様子だったことを思い出した。

(一緒に行って下さるの?……いいのかしら)

 何とか呼吸の仕方を取り戻し思う。
 冤罪を晴らすのは自分がやるべきことだ。
 ストラの手を借りる必要はない。
 だから大丈夫だと、そう言えばいいのだが――。

「はい、ありがとうございます」

 ティアリーゼは礼を言って、硬く大きな手に自らの手を乗せた。
 ストラはずっと仕えたいと思っていた推しの神。
 聖女となって妻として仕えると決めてからも、あくまで仕える相手。
 だから、未来の夫として手助けしてくれるという彼には戸惑いが大きい。

 なのに、ストラの手を借りる必要はないと思う反面、心強いと思ってしまった。
 共に来てくれるという言葉を……嬉しいと思ってしまった。
 この気持ちは何なのだろう。
 敬愛、信頼、崇拝。
 どれも近いようで全く違う。

(そう、もっと近しい……親しみのようなもの)

 トクン、トクンと優しく脈打つ鼓動に身を任せるように、ティアリーゼはストラと共に歩き出した。