だが、そんなことを繰り返すうちにフリッツの心は自分から離れてしまったのだろう。
 ないがしろにされることも増え、ティアリーゼを良く思わない令嬢からの噂も相まってすっかり悪女扱いされるようになってしまった。

 国の上層部はそのような噂を信じてはいなかったが、流石に対策を考えねばと思い始めていた頃。
 国王夫妻と宰相が揃って国を空けているとき、事件は起こってしまった。

 何でも、ティアリーゼがメラニーに渡した茶葉に毒が混入していたというのだ。
 毒見した側仕えが死んだように眠りずっと目覚めないと涙を流しながらメラニーは訴えていた。

 だが、その茶葉はティアリーゼとフリッツのお茶会に乱入してきたメラニーが、フリッツにねだって無理矢理持っていったものだ。
 しかもその場で急遽渡したもの。
 直前まで二人が飲んでいた茶葉なのに毒など入れる暇などある訳がない。

 なのにいつもの茶番劇を繰り返した彼らはティアリーゼを問答無用で拘束した。
 そのまま極刑に処す、と王城からほど近いあのテシュール湖に連行されたのだ。
 桟橋でフリッツから婚約破棄を一方的に宣言され、彼の魔術によって落とされた。