神々と人が近しい世界・ハイリヒテル。
 そんな世界の中立国・アインツの公爵令嬢として生を受けたのがティアリーゼだ。
 地位も魔力も申し分なかったため、王太子の婚約者とされてしまった。

 政略結婚とはいえ、王太子であるフリッツとはそれなりに信頼関係を培ってきたはずだ。
 なのに、一人の子爵令嬢が彼と親しくし始めたことにより二人の関係が崩れてしまった。

 フリッツは王太子。
 いずれ王となるからには側妃の一人や二人はいてもおかしくはない。
 だからティアリーゼも口をはさむつもりはなかったのだが、その令嬢メラニー・ムバイエに問題があった。

 自分よりも高位の貴族に気安く接し、フリッツ以外にも婚約者のいる男性に近付いたりと評判が悪い。
 フリッツの側妃になりたいのであれば態度を改めるようにと注意せざるを得なかった。
 だが、注意した途端彼女は泣いたのだ。

 そして泣く彼女を慰めるようにフリッツ含め彼女と親しくしている貴族の令息達が集まりティアリーゼを非難した。
 詳しい事情も聞かず一方的に告げる男達に、ティアリーゼは呆気に取られてしまった。
 しかもメラニーに注意するたびに似たようなやり取りを見せられるのだ。
 もはや喜劇にしか見えない。