魔力を重視している貴族が神官になることは少ないため、疑問に思ったのかもしれない。
 明らかに貴族と分かる出立ちなのに、供一人ついていないことも不審を抱かせる原因になっているのだろう。

「そうですか。まあ、神殿は信徒を拒むことは致しません。ただ、神官になるには一定以上の聖霊力が必要ですよ?」

 準備を終えてティアリーゼに向き直った神殿長が心配そうに聞いて来る。
 神官になれなかったら怒り出すとでも思われたのだろうか。
 ティアリーゼは困り笑顔で「大丈夫です」とだけ答えた。

「では、祭壇に祈りを」

 促され、祭壇の前へと進む。
 膝を折り、手を組むと軽く目を伏せ祈りを捧げた。

「ハイリヒテルの偉大なる神々に祈りを捧げます」

 祈りを捧げるという宣言をし、自分の推し神に祈る。
 その祈りに聖霊力を乗せるのだ。

 だが、今は洗礼の儀式。
 五柱の大神に聖霊力を捧げ、神官となるに相応しい聖霊力量があることを示さなくてはならない。