「そうと決まれば神殿へ向かいましょうか」
「ピュイ!」

 ティアリーゼは透き通った空色の瞳を小鳥に向け微笑む。
 すると小鳥は返事をするように鳴き、翼を羽ばたかせ飛んだ。
 嬉しそうに「ピピピ」と鳴きながら頭上を旋回している可愛い小鳥に、ティアリーゼも楽しくなってくる。

「そうだわ、あなたに名前を付けなければね」

 元々の名前があるのかもしれないが、聞きそびれてしまった。
 常に近くにいてくれそうなこの小鳥を呼ぶ名がないのは不便だろう。

「そうね……鳴き声がピュイ、だし、ストラ様からお預かりした小鳥だから……ピューラはどうかしら?」

 見上げて呼び掛けると、「ピュイ! ピュイ!」と嬉し気に歌う小鳥。
 どうやら気に入ってくれたらしい。

「では行きましょうか」

 小鳥――ピューラの愛らしさになごみながら、ティアリーゼは歩き出した。


 神官には神殿で洗礼を受けなければならない。
 どんな小さな神殿でも洗礼を受けることは出来るため、ティアリーゼは現在地から一番近い神殿を目指した。

 人と神が近い世界ゆえ、神殿はいたるところに建てられている。
 小さなものを含めると、この王都だけで百は軽く超えるだろう。