「可愛い……」
「気に入ったのなら良かった」

 ストラは切れ長な目をほんの少し優し気に細めると、ティアリーゼの手を取り立ち上がらせた。
 そして片手で彼女の濡れた髪を撫でるように払うと、温かい空気がティアリーゼを包み髪も重かったドレスもすっかり渇く。

「あ、ありがとうございます」
「いや、礼を言われるほどの事ではない」
「それでも、ありがとうございます」

 礼の言葉は拒否されたが、それでもストラ自らが力を使ってくれたのだ。
 ティアリーゼにとってはその事実だけでも至上の喜びだった。

「では行くが良い。私はいつもお前を見守っている」
「ありがとうございます。ストラ様……私、絶対聖女になりますね!」

 ストラの手が離れ、今度こそ人間の地へと帰されるのだと思ったティアリーゼは宣言する。
 聖女になれば、ずっと推してきた神の許に行けるのだ。
 ならば全力で聖女を目指そう。

 その決意を他の誰でもないストラに誓う。
 誓いを受けるように目の前の美しい神の口角が上がる。

「楽しみにしている」

 その言葉を最後に、ティアリーゼは白い空間から出されたのだった。