だが溺死よりはよほど幸せな死に方だろう、などと現実逃避しそうになると、顎に添えられていたストラの指が流れるように頬を掠めながら離れてゆく。
 その僅かに色気を感じさせる仕草に、ティアリーゼの思考が止まった。

「では、私の伴侶となるべく聖女を目指してくれるな?」

 コクコク。

 微笑みに見惚れ、言われるままに頷くティアリーゼは理解出来ているのかすら定かではない。
 だが、ストラは満足そうに笑みを深めた。

「では、“これ”を預けよう。私との繋がりとなる」

 そう言ったストラがくるりと手のひらを返すと、先ほどまで存在しなかったものが現れる。

「ピュイ!」
「……小鳥?」

 思いがけぬ可愛らしい生き物の登場にティアリーゼはコテンと首を傾げた。

「ピュイ?」

 赤い羽の小鳥はティアリーゼに倣うように小さな頭を傾ける。
 とても可愛い。

「私の使いだ。お前の助けにもなるだろう」
「あ、ありがとうございます」

 小鳥が乗った手のひらを差し出され思わず受けるように両手を上げると、小鳥は飛び跳ねながら移って来た。
 手のひらに乗った小鳥は、ティアリーゼを見上げまたくりんと頭を傾ける。