「忘れるって、何を……」


言うと、凌久くんは私の手を持ったまま立ち上がる。引っ張られて、私も自ずと立ち、凌久くんの正面に来た。


「告白ってのは、返事を聞かないといけないだろ?俺、まだ返事を言ってないからな」

「え、あ……だって、それは……」


顔に熱が溜まる。凌久くんを、直視できない。


「凌久くんは人気声優だから、その……一般人の私なんかと付き合えないんじゃないの?」

「自分で告白しといて、今更なに言ってんだよ。じゃあ、俺が他の誰かと付き合ってもいーのかよ」

「うっ、それは……嫌」


素直に言うと、凌久くんは「そーかよ」と言って、ニッと笑う。


「それが聞けりゃ充分だ」

「へ?」

「芽衣、こっち来て」