「(私は、凌久くんの事が好き。例え意地悪でも、顔が怖くても……その想いは、決して揺らがない)」


だけど、少しだけ。私が凌久くんの心を、揺らしてみても良いかな?

凌久くんの心の中に、私という風を吹かせて、そして――少しでも、私を意識してもらいたい。


「私が……私が歌沢くんのただのファンって聞いて、どう思った?」

「へ……?」

「……っ」

「え、っ!」


凌久くんは少しだけ目を開いた後。居心地が悪そうに、私から目を逸らす。

そしてポケットにズボッと両手を入れて、いかにも虚勢を張ったらしい雰囲気を出して……小さな声で、こう言った。


「ただのファンって聞いて……安心した」