数日後、青山は軽い頭痛を感じながら帰宅した。

「ただいま…」

「おかえりなさい。あら、どうしたの?元気ないわね」

青山は、愛妻の顔をじっと見つめた。

(50代後半になったとはいえ、陽子は今でも可愛らしいな…。こんな素敵な人がかつて、あんなクズ女に憧れていたとは、人生わからないものだ)

園田の車に当て逃げした赤い車の犯人は、轢き逃げ犯と同一人物だった為、つい先日のニュースでも、ヤスダサヤカ容疑者のことは、テレビのニュースで見て、夫婦で驚いたばかりだった。

サヤカというのは、中学時代、陽子の純情を踏み躙った女である。

陽子は、昔のことはもういいと言うものの、青山にしてみれば、大切な人を傷つけた憎い相手だ。

青山も、それまではサヤカのことなどすっかり忘れていたのに、あろうことかサヤカは、

「同級生のピンチなんだからさぁ、助けてよ」

厚かましくも、青山に留置場での接見をさせたのである。