青山リナは今、恋人である園田と、高級イタリアンレストランで向かい合って談笑している。

しかし、リナは内心、

(園田くん、どうして今日は一張羅なんだろう?それに、記念日でもない限り、ゴージャスなデートはやめておこうね、って常日頃、私から言ってるのになぁ…)

そう思いつつも、彼の気遣いやプライドを考慮し、敢えて口には出さずに居た。

食事が終わると、園田は家とは真逆の方向へと車を走らせる。

「ねぇ、何処行くの?」

「だーれもいない海」

随分古い歌を、しかも調子外れに口ずさむ園田に、リナは苦笑いしつつ、

「何それ。二人の愛を確かめたいの?」