しばらく丘を登った私たちは、あのしだれ桜に着いた。

私は桜の木に呼びかける。

「桜の神様!」

「穂高くんにかかった魔法を解いてください!」

桜の木からは返事がない。

「ダメか・・」

私が落ち込んでいると、穂高くんは笑った。

「俺はこのままでいいって言ってるのに」

「それとも音葉ちゃんは俺が好きなままだと嫌?」

穂高くんの問いに私は答えられなかった。

前は魔法を絶対に解かなければと思っていた。

でも、今は穂高くんと繋がりがなくなるのが寂しい。

「私ってずるいな」

そう呟いた私に穂高くんは、

「俺の方が何倍もずるいよ」

と悲しそうに笑った。