土曜日。穂高くんとあの桜の木に行く約束をした日。

「音葉ちゃん!」

穂高くんが私を嬉しそうに呼んでいる。

「穂高くん、待った?」

「全然待ってないよ、それに音葉ちゃんを待つのは楽しかった」

相変わらず、穂高くんは甘い。

「じゃあ、桜の木に向かおっか」

「うん」

私は穂高くんをあのしだれ桜に案内した。

しだれ桜のある丘へは少し歩かなければ行けない。

「音葉ちゃん、大丈夫?この先まだ長いけど」

「穂高くん来たことあるの?」

「近所だからね」

穂高くんはそう言って嬉しそうに笑った。