甘く堕として、君に溺れて。




「......で?」





藤堂 (かなえ)


それがこの、人気者の名前である。





「......で、って言われても......」





私は弁解を始める。


で、って言われても......。





「言われても? 何かあるの?」


「な、ないです......」





ないです、としか言えない。


こわい、この人気者。





「......じゃあ、朝、なんで逃げた」


「あー......、と、あれは......」





声がワントーン低くなった。

視線を逸らす。


......藤堂 叶、というこの男の子は、裏表ありなのだ。


皆の前で見せているあの優しい顔は、全部嘘。

こっちが本性なのだ。


なぜか彼は、私にだけ、その本性を見せる。





「ひゃあ......っ」





背中のあたりをつつー、と撫でられ、そんな声が出る。





「叶......っ」





何してるの、と意味を込めて叶を見る。


人前では藤堂くん、と呼んではいるけど、二人きりの時は、こうして名前呼びになる。


......殺されたくはないけど。
名前呼びが慣れているのだから、仕方ない。