姫でもないし、騎士でもない。


だけれど、私は、違うことを心の中で思っていた。

身長が小さいとこんなにも嫌だということ。

「返──────「やってあげる」

ふふんと鼻穴が大きくなった。

「気持ち悪い!!!」
「冗談。……早くやって、教室来いよ?」
と言いながら、くるくると綺麗に巻いたサラシを私に渡す黒瀬拓也。

そして、私も、サラシを巻き終わり、廊下を走って、教室に戻った。


戻ったら、戻ったで。


『姫』と『騎士』が選ばれていた。

「す、すいません!先生!遅れました!」

「あぁ。晴翔、座ってくれ」
「はい!先生!」

私はすぐに、座って気づいたことがある。

前に──────黒瀬拓也がいたのだ。


「また、会ったねー。俺のお姫様」

「……っ!?」

その顔、反則すぎるだろ!!?
チャラいのにーー!!

というか、分かってたよ!!

「おい!黒瀬!日向!前向け!」なんて声が聞こえて、やっと夢じゃないと覚めた。

「はぁ゛い!」
私は、夢じゃないと覚めたと同時に、上擦った高い声が出た。

高い声が出たから、くすくすと笑っている人がいた。

やばい……恥ずかしい……!
私は顔を下に向けた。

このとき、私は思った。
きっと『騎士』には選ばれないと心の底から思った。


この学園、まだ、面白いことがあった。

この学園では、1期生(1学年)、女子4人、男子80人となっている。
そして、4組に分けられており、1組に女子は1人となっている。

女子は姫と呼ばれ、特別な扱いを受けることになる。


だから、女の子誰だろう?
と思ったのに。何故。


ここに──────アリアがいるの……!?