姫でもないし、騎士でもない。


……ん?待って。

な、なな、何で。私の名前を知っているの──────?
でもそんなの気にしてる暇は無い。

「というか、サラシを返せ!!!」

そう。私が失くしたのは、サラシ。
胸を小さくするためにしているサラシ。

そのサラシを……男に見られた。

しかも最悪なことに、黒瀬拓也に──────!!

黒瀬拓也。
HOTEL KUROSEの跡継ぎ息子として、すごく前から取材やネットに取り上げられている男。
そして、僕と同い年。晴翔とも同い年で、幼馴染でもあるらしい。そして、私のクラスメイトでもある男。

めちゃくちゃ頭がキレるって噂。

そして、私の席の前。

それしか、僕は知らない。

あと、顔は芸能人級。
綺麗な髪が瞳まで垂れており、綺麗な顔が台無しだ。

だけど、それでも、綺麗な顔と思ってしまうほどだ。