何にも言えなかった。
瞳からには涙が出ており、Tシャツがはだけてる。
そのTシャツが男性用なので、理性が弾ける。

やばい。
唆る。理性が爆発する。

けど、まずは。

姫を救うのが義務だ。

騎士の役目なのだから────。





「……起きました?黒瀬さん?」

もう、戻ってる。
ねえ、なんで、敬語?

小さい頃、笑って、普通にタメ口で話してたじゃん。

ここは……あぁ、そうか。保健室か。

俺は気を失った十夏を運ぶため、お姫様抱っこで、保健室まで持って行った。
それを知らない十夏だけど。

……ん?
手、外してる…。

……はぁ。
早く、俺のに────「待て。拓也。俺と十夏で話をさせろ。」

最悪。と思って、十夏の腕を握り、十夏を抱きしめようとしたら、
晴翔が邪魔してきた。晴翔は、俺の腕を手で握る。

「はぁっ?……嫌なんだけど」

そりゃ、お断りだ。
十夏のもとを離れたら、俺の理性がどうにかなるか分からないし。
十夏がどうなるかも分からない。

もしかすると思い出すかもしれねえから。


だから。

「嫌だよ」
舌をベーっと晴翔に向けて出す、俺。

「あ゛?」
「ちょっ…お兄ちゃんと黒瀬さん!!」

「ねえ、敬語。直してよ。タメ口に」

すぐ気づく俺。
本当、重症。

「……?な、なんでですか?」

はぁ。本当、鈍感すぎる、十夏。
けど、そこも可愛い……。

「俺をもっと意識するために」

「……へっ?」
顔をボンッと一瞬にして赤くなる俺の姫。

「────おい。十夏と話をさせろっつてんだ……「はいはい!!やめやめ!!」

……?
この声、どこかで………。

「姉貴!!!」
「先生!!?」
「遥!?」

同時に声を出す、俺と十夏と晴翔。

「ねえ、あんたら、もうちょっと、小さい声で言えない?
十夏ちゃん、可哀想でしょ?……もう、全員、何言ってんのか分からないわ。」

その通りです。
……けど、お前が、姉貴が、ここにいるなんて、わけ分かんねえだろ!

「んーー?私は、免許取ったから、ここにいるんだけど?」

……声、出てた。
やべ。
少しだけ、俺は背中に冷や汗をかいていたら。

「あんたは、私に事情を話しなさい。」
俺のシャツの後ろを握った。

「はっ!?」
と言いながら、俺は姉貴に保健室の廊下まで、持って行かれたのだった。
そして、十夏は苦笑いしていた。

やばい。
苦笑いしてても可愛いんだけど。

はぁ。相変わらず、俺は重症。