「───────です。」
聞こえない。
男がうるさい。
なななな、な、何で、こんなに、男がいるの!?
私の右、左にも、男!男!そして、後ろにも前にも男!男!
全部の方角に男!男!男!おとーーーーこーーー!!!
そして、すごく遠い場所に女の子たちがキャッキャ。
あれ?何で、女の子と男が隔離されてんの?
はい。そう思った方もいますよね?
私もその中に入っている方です。
そう。私たちが入った学園は─────────
─────────異世界のような学園だった。
【私立姫立学園】
全寮制の学園である。
……だが、この学園には面白い制度がある。
〝女子は『姫』、男子は『騎士』になる制度があり、騎士は姫を守らなくてはいけない〟
〝女子が『騎士』を指名できるが、男子はそれを断ることもできる〟
『姫』『騎士』
そんなの、おとぎ話か、少女漫画しかないと思っていたのに……。
……ここにあるなんて、嘘……だよね……。
「ほら行くわよ。十夏──────じゃなかったわ。晴翔」
「うん。そうだね。母さん」
声も、髪も変わった私。─────いや、僕。
だけれど、顔だけは変わってない。
だって、似すぎて、お母さんも、お父さんも間違えるほど。
お兄ちゃんと私は同時期に生まれた。いわゆる、双生児というやつだ。
だから、間違えるということ。
──────だから大丈夫だろう。
でも、まだ私が──────僕が知らないこと一つあった。
〝姫は、お金持ちの子ごなることが多い為、危険が伴う〟
お金持ち?
私、お金持ちの子……なのかも。
そう。私の家は、日本で知らない人がいたらすごいと言われるぐらいの会社。
旅館ひなたぼっこ
日本発の旅館であり、老舗と言われている。
お父さんのひいひいひい──────もう、どこまで行くかわからないけども。
すごく昔から始まった老舗旅館だそうだ。
お父さんが総支配人、代表取締役社長で、
お兄ちゃんが副支配人で、今、絶賛勉強中でもあり、仕事中。
「────皆さん、これからよろしくお願いしますね」
校長先生、優しそう。
と思っていたら、「教室に行きましょう!」
そう。担任の先生が言う。
もう!!!!!?
と私はびっくりしたけれど、男たちは背筋を伸ばして、静かに声をひそめていた。
……そうだ。
選ばれるんだ。
『姫』と『騎士』
誰になるんだろう──────。
そう私が思ったのは確かなことだった。


