「ほら!こっちこっち!」

「待てよ!」

なんで、こんなにも追いかけているのだろう。


「──や、めてください。失礼ですよ……うっ!?」

綺麗な大の字で、俺を守ってくれる。庇ってくれる。

顔も、足も、腕も傷だらけ。
泥んこや、血がいっぱい付いている。

あぁ。この子をなんで、守れなかったのだろう。

一緒に楽しく遊んで、笑っていたのに。


「ごめんね!私、引っ越すことになった!ずっとかもしれない。」

「はっ?ずっと?帰ってこねえのかよ?」

「うーん。そうかも」

「な、何でだよ」

………やべ。
泣きそう。

「お父さんが結婚するんだ!」

「……そ、うか」

「もしかすると、幼馴染の約束、忘れちゃうかも!」

「おい!……わ、忘れるな」

「……ふふっ。分かった。同い年同士の──幼馴染の約束」

〝幼馴染の約束〟
久しぶりに聞いた言葉。


忘れてないよな。


そう言い終わったあと、俺は俺の姉貴に言った。

「ねえ。姉さん。運命の糸ってあるのかな」

「────さぁ。どうでしょうね…?」


運命の糸……あったら良いのに………。

小さい頃、そう思ったのは、確かだった。


けれど………お前は、ずっと。
俺の元に帰ってこなかった。


何ヶ月も……何年も……何十年も待ったのに────




「おい!見てみろ!可愛いだろ!?」

────……っ!?

この胸の高鳴りは────。



────久しぶりだった。