何で、こいつがいる─────?

こいつは───── あいつのところの────………。








白蝦蜂重。

白蝦製薬の跡取り息子と言われている。
黒瀬拓也と同じように頭がきれ、絶世のイケメンと、女の社員は言っているらしい。

丸いメガネをかけていてもイケメン。

そして、その叔父は老舗旅館ひなたぼっこの専務という。

あらゆる方向の社会にいるやんごとなき一族らしい。








「ねえ。お前、俺の『姫』に近づかないでくれる?おにーさん?」

そんなの聞こえてるよ。

胸がトクンって少しだけ鳴ったよ。
耳に聞こえてる。


と思う。でもね───────

「何で、いるの?あなたが────」

────私のど直球のタイプなんです。

「大丈夫?」

「は、は────「ねえ。十夏。触るな」

「えっ?」
私は自然に、近い黒瀬拓也の顔を見てしまった。

見てしまった。

そう。カッコよすぎたからだ。
私のタイプでも無い人に。

────ときめいて、しまった。


だけど、私のド直球のタイプが前にいると、あの金髪イケメンの方へと見てしまう。

私は差し伸べられた手を掴もうとしたら、先に、黒瀬拓也が────

「あ、あの────ありが「ありがとう。白蝦蜂重(しらかはちしげ)さん。」

────手を握った。

「……っ…覚えていてくれたんですか」

目を開いた金髪イケメン。

「はい…覚えておりましたよ。いつもお世話になっております」

……!?
黒瀬拓也が……お辞儀をした…?…!

私はそう思いながら、ずっと、尻餅を付いている形で止まっている。

「あ、あぁ。大丈夫だったか?そっちは?」

「そっち?」
黒瀬拓也の耳が少しだけピクっと動く。

私は口を閉じるだけ。沈黙を今している。

だけど、沈黙を解いたのは────

「ねえ、今、とう────んっ!?「ありがとうございます!え、えーと。蜂重さん!」

────黒瀬拓也and私。

……ちょいちょい!!
今、私を『十夏』って言いそうになりましたよね…!!?

黒瀬拓也!!

私は瞳をグッと開いて、黒瀬拓也の方を見る。
怒るように。

だが、肝心の黒瀬拓也というものの。

ニッコーって笑うだけ。
営業スマイルか!なんてツッコミたいところではあるけれど。