何だ……この男。
背が小さい。

女か?いや、年下の男か?

そんな疑問を抱いた。
俺は普通に歩いていたら、ある男にどーんとぶつかってしまった。

そのぶつかった相手が───「いったっ……」

───すごく可愛すぎたのだ。

だから、疑った。

〝女〟と。

……だが、女なんかいるはずが無い。

もう、クラスで『姫』がいるはずだ。

───じゃあ、こいつが『騎士』?

……いや。そんなわけ。

ここは、高校生だぞ?小学生、いや、中学生みたいな背が小さい男が、
こんなところにいるのは───「大丈夫ですか?」

俺は早速、声を出した。

信じられなかった。

こんな可愛い男がいるのかと。
こんなにも、か弱く、細い体で、『姫』が守れるというのか───?

そして、背も小さい。

……?もしかして、こいつが───いや、スカートを履いていない。
ネクタイの色は水色……ということは3組か。

……ん?そこって?


確か───── 「ねえ。お前、俺の『姫』に近づかないでくれる?おにーさん?」

───── 黒瀬拓也(あいつ)がいる。


俺の大嫌いな人が───── 。


『始めなさい』

そんな声が俺の片方の耳の中に響いた。


────何でですか。

俺がそんなこと────『あなたがタイプなの。あなたしか────』

────いないの。

でしょう?

『そうよ』

『あなたのお父さんが────』

分かってます。

俺たちは、あなたのお父さんに一生、頭を上げられないのだから。