「何?十夏?俺に惚れたの───?」

「馬鹿か!普通の声で出すんじゃねえ!
今、体育!お前、ほんと、どっか抜けてる部分が───「おい!晴翔!ボール大丈夫だったか!?」

「───あ、うん!大丈───「ぶじゃねえな。こんな腕、ほっとけねえよ。馬鹿」

そんな会話をするなんて私は、思ってもみなかった。


その思ってもみなかった何分か前のお話をしよう───。


私のクラスは体育という科目で、『バスケ』をやっていた。
まぁ生憎、『姫』だけは、綺麗な椅子に座っているだけのこと。

男は、まだまだ、良いとこを見せないと、有明アリアの『本物』の『騎士』にはなれない。

けれど、意外なことがあったので。私が、『保留』の『騎士』でございます。

私もかっこいいところ見せないと……!
お兄ちゃんが順風満帆な生活を送れなくなる!

「晴翔!」

私に───いや、僕に渡したボールが───「お、おい!?」


黒瀬拓也の方へと向かう、速い速度でボールが回っていく。

「ちょっ……やばい!」

「黒瀬!起きろ!!」なんて先生は言うけれど、
黒瀬拓也ご本人様には聞こえてなくて、ぼーっとしているような顔だった。

じゃあ、私が言えば──────なんて、思った時には口に出してた。

「拓也!!!」

「………」

「おい!!!拓也にいちゃん!」

……?拓也、にい、ちゃん?

何言ってんの……?

だけど、そんなことを思っている暇がない。

もうすぐ事故になるのだ。
私の目の前で。

いやだ。
そんなの。

「……も、間に合わないっ…!」と言いながら、私の体は動く。
ボールの目の前へと。腕が。

バァアアン!!!
そんな音が、体育館に響き渡った。

それと同時に───「何?十夏?俺に惚れたの?」

─────黒瀬拓也が夢から覚めたような顔になり、今に至るというのだ。