「えっ、用っていうか、その…。あたし、本郷くんの事が好きですっ!よかったら付き合ってくださいっ」

女は緊張しているのか声が震えている。

どれだけの勇気を振り絞ったのかは知らねぇけど。

「どこの誰だか知らねぇけど、TPOわきまえないで告ってくる奴とか無理だから」

「…お前がそれ言う?」

「ごめんなさ…っ。でもあたし本気で本郷くんのことがっ、」

「俺。こころに決めた女いるから」

この女のせいですっかり食欲をなくした俺は、女の顔を一度も見る事なく席を立った。

「おいっ、漣っ!」

背後から賢太郎が追いかけてくる気配を感じたが、俺は迷わず歩を進めた。

ああ、やっぱり一刻も早くみあの声を聞かないとダメだ。耳が腐ってしまう。

食器を返却口に返して素早く食堂を後にすると、ソッコーでスマホを取り出してタップした。

プルルルル__プルルルル__プッ、

『ーーもしもし、お兄ちゃん?」