わたしの明確な意味と意図を持った言葉に、若サマはほんの少し視線を落として、そうか、と呟いたあと、漆黒の瞳に、再度わたしを映した。
「では、………えるには、家族はいるか?」
きっと、とても慎重に、けれど銃のグリップを握りこむような強さで放たれた言葉は、思っていたよりも平凡な形で落とされ。
だからか、それに答えた声は、ひどくあっけらかんとした音になってしまった。
「家族、ですか?……血縁上でしたら、いますよ。おそらく、今も生きているんじゃないでしょうか」
「……生死は定かではないのか?」
「はい。わたしに妹か弟がいるのかも、今どこで何をしているのかもわかりません。わたし、産まれてすぐに売り飛ばされたので」
さもそれが日常であるかのような。
今では言い慣れてしまった若サマや琴の呼び名を発する時のような。
そんな声音で話したからか、琴と睿霸の顔が一瞬この世に存在していない言語を聞いたかのような不思議な表情になったあと、数秒の間をおいて強張った。
「……売り飛ばされた、と誰かが教えたのか?」
そんなふたりを置いて、若サマは滔々と質問を続ける。
「いえ。わたし、幼い頃からずっと記憶がちゃんとあるんです。所謂、幼児期健忘と言われるものがわたしにはなかったようで」
だから、世俗では親と呼ばれる人間から、一体どういう目で手放されたのか、よく記憶に残っていた。



