けど、今、目の当たりにしているのは。


「ごめん。好きな人いるから。ほんと、ごめん」


笑顔が綺麗なんだけれど、先輩から出た言葉が、自分では信じられない。
泣きそうだし、自分の胸が苦しい。


そして、私がチョコを渡そうと思ったのに……。
私って悪運強いよな……。

というか、チョコ渡した女の子泣いてるし。

ということは………?
わたくしのチョコ(本命)あげても無駄では?

いや!挑戦してみないと!!!?
でも、逃げる方が得策ではあると思うけども……?

どうしよう!このチョーーーーーー「心?どした?」

……っ!!?

「な、んで」

「何でって、こっちが聞きたいよ。心」

この笑顔も、作り笑顔だろうなと思う私。
そう思う私が馬鹿らしくて、先輩を見れない。

「心、どしたの?」

「……え?あー。私もチョコを渡そうと思いまして」

やばい。絶対、私、苦笑いだ。
背中にチョコ隠すなんて、自信ないって言うのを先輩にもう見せてるみたいな。

でも、先輩は瞳が大きく開いた。


何でだろうと思うけれども、そんなの意味のないことだから。
意味、ない、……よね。


私はこのチョコが先輩への本命チョコだけれどーーーーーー


「ーーーーーーーーーーーはい!先輩、友チョコですっ!」

こんな笑顔、初めてしたわ。
切ない気持ちを隠しながら、笑顔をするなんて初めてのこと。

「………ねえ、そのチョコ俺に?」

「はい!」

……嫌だな。
自分が先輩の好きな人に嫉妬をするなんて。

そんなことを思いながら、自分が一生懸命作ったチョコを先輩に渡す。

「友、チョコ……」

「はい!友チョコですよ!……受け取ってくれないと、私が悲しいです!」

「………」

先輩、沈黙。

じゃあ、ゴリ押しで!

「受け取って!!!先輩!!」
私は先輩の胸に私のチョコを渡した。

「……おい!?」

「じゃあ、また、放課後ね!」
そう言いながら、廊下を早歩きで先輩のところから去っていった。


私は知っている。先輩の好きな人のこと。