「彼を引き取ってからも濁った目は変わらなかったの。当然よね。あんな事件が起きたんだから」
「だけどこのままでは彼の未来まで閉ざしてしまう。だから、日本から離れることにした。日本にいれば嫌でもあの事件がまとわりついてしまうだろう?」
日本にいれば、好奇な目で見られることもあると思う。
あの大事件の被害者遺族ともなればスキャンダルを狙う記者だって出てくる。
どうしたって自分の周りをはやし立てる人達だっていたかもしれない。
この島国の日本にいる限り、彼にとってあの事件がまとわりつくことは避けられない事態だったのかもしれない。
「だからオーストラリアに...?」
「えぇ。ある種賭けだったけれど。ただ日本だけが全てじゃないことを知ってほしかったの。すり減った心を回復する場所が伊月には必要だと思ったから」
お二人のその決断は今の伊月を見て分かるように絶対に間違っていなかった。



