「サラ! ようやく僕のもとに戻ってきてくれたんだね!」


 私の足元で40歳くらいの金髪の男性が、キラキラとした喜びの目をして私を見上げている。


「ど、どなたでしょう?」
「僕だ! エドワードだよ!」
「エドワード様?」


 そんなはずはない。私はさっき死んだはずだし、私の知っているエドワード様は15歳だ。


 それにもしあなたがエドワード様なら、昨日私に婚約を考え直したいと言いましたよね? なぜそんなに私に会えて喜んでいるの?


 いったいこれはどういうことなのだろう? 私は混乱した頭で、今日あったことを最初から思い出すことにした。





「サラ、僕は君との婚約を考え直そうと思う」


 そう告げるエドワード様の隣には、美しい令嬢が申し訳無さそうに私を見ていた。


 今日は仲直りのために呼んでくださったのだと思っていたのに。呆然とエドワード様を見つめながら、テーブルの下でギュッとハンカチを握りしめる。


 その美しい女性は隣国マリス王国のソフィア王女だとういう。エドワード様に紹介され、にっこりと優雅に微笑む姿は大輪の薔薇の様に美しい。


 伯爵令嬢である私サラ・オルレアンと第1王子のエドワード様は、周りから言わせると「仲が良い時は2人の世界で楽しそうだが、一度喧嘩すると手が付けられない」関係らしい。


「サラは魔術のことになると短気だし、謝らないから困りますわ」
「あら、エドだってすぐ真っ赤になって、部屋に引きこもってしまうのよ」


 お母様と王妃様のお茶会では、よくこんな会話がされている。それでも私達は喧嘩しては仲直りをし、いずれこのまま結婚するのだと信じて疑わなかった。