――あの日、私は家に戻るとお父様が待っていた。
『……お父様』
『郁花、……戻ってきてくれたのか』
心なしか落ち込んでいるお父様とお兄ちゃんの「おかえり」と言う笑顔が迎えてくれた。
『お父様、私の話を聞いてほしい』
私は、今の気持ちと優也くんのこと。家のことは知らなかったこととか、まだ私の片想いだということをお父様に伝えた。
『郁花は、……郁花は、その彼が好きなのか?』
『はい、好きです』
『……そうか……』
『お父様、私ね。彼に出会っていろいろなことを知ったんだよ。料理もできなかったのに少しは料理もできるようになったの。それに、彼と居ると世界が変わって見える……今までは疲れるからって車で移動してたけど、彼がいたら歩いても疲れないの』
本当に優也くんにはいろいろな初めてを教えてもらった。それが初めてなことは不安だけど、優也くんがいたら本当に楽しい。