【ういこん小説コンテスト用作品】優しい恋の育て方



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「――そうですか、そんなことが……旦那様は変わりませんねぇ」


 一通りお父様との経緯を説明すると、サエさんは微笑んだ。


郁萌(いくも)様……郁花お嬢様のお母様ですね。郁萌様もそんなことを言っていました。『あの人、干渉しすぎ! 私の交友関係まで調べ上げるなんて!』って……」

「え、お母様にもそんなことされていたのですか?」

「えぇ、旦那様は仕事面では優秀な方ですけどね。どうも人間関係ではうまくいかないみたいで……ご両親から『人を信じるな、常に疑え』と言われていたので、それが今の旦那様を作り上げているんだと思いますよ。大切な人になると行きすぎちゃうところがありますけど」

「ですよね! 愛してくれてるんだってのはわかるんですけど、これはやりすぎだって思ってしまって」


 サエさんは確か、お母様と同い年でお父様の婚約者時代から一緒にいるって聞いた。だから結婚前からの二人をよく知ってる人物でもある。