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「郁花、忘れ物はないか? 大丈夫?」
「うん、お兄ちゃん。送ってくれてありがとう」
入学式当日、私は兄の郁斗に学校の近くまで車で送ってくれた。
「いや、いいんだよ。可愛い妹としばらく会えなくなるんだし当然だ」
お兄ちゃんは、私が七海学園高校に入学したいとお父様に反対されていた時に賛成し応援してくれた。
『……父さん、考えてみて。あやが金の夫婦の卵に選ばれたら樹神の箔もつくんじゃないかな? 幸い、俺も結婚してもうすぐ子供が生まれるんだから跡とりには困らないと思うよ』
『だ、だが……』
『子離れも必要だと思うけど。だって、あやが自分から何かしたいって言ったのは初めてなんだからあやの気持ち、尊重してあげようよ。母さんだってそれを望んでいるはずだ』
そう言ったと同時に私の背中をも押してくれたのだ。



