〈優也side〉
「――頑張ろうねっ」
目の前にいるのは、顔を真っ赤にした女の子。ペアの樹神郁花さん。
彼女は、七海夫婦の会社と同じくらいホテル業の中では大企業で樹神リゾートの社長令嬢。何度かメディアでも見たことがあるし、有名な子。
可愛くて、優しくて、頭も良くて完璧な彼女がペアの相手なんて本当に今でも信じられない。
その一方で僕は、大家族の次男で貧乏な家で育った。家事全般は大体できる。
家事をやったことない彼女とは、相性がいいのかもしれない……多分。
「ご、ごめんね。優也くん……足を引っ張ってしまって」
「大丈夫。僕もごめんね」
彼女がどうしてこの学校に通っているのか理由はわからないが、僕の場合不純な理由だ。簡単にいえば一攫千金を狙うためだ。
「……でも、楽しかったね。なんか距離は近いけど」
「そうだね」
そう言って郁花さんは微笑んだ。
その表情が可愛くてまだ出会って数日しか経ってない相手なのにドキドキした。