目的の階に着くと、チンと軽やかな音を立てて止まる。

エレベーターの扉が左右に開かれると、シックな色合いの空間が広がった。

ドアが四つあり、左側にトイレと風呂場。

右側には琴が済んでいたアパートの部屋よりも広いウォークインクローゼット。

正面のドアはリビングダイニングに続いていた。

最初に目を奪われたのは白い大理石で造られたアイランドキッチン。

「一通りの調理器具は揃っています。その他、家具家電も勝手ながらこちらで選ばせていただきました」

至れり尽くせり過ぎやしないだろうか。

「少しでも快適に過ごせるようにと、麟太郎様から仰せつかっております」

平然と答えるクドが末恐ろしい。

命じる麟太郎も麟太郎だが、上流階級の人間の豪快さと言ったらない。