初恋わすれ

「あーあ。本当どこに忘れてきちゃったんだろ」

リンが、あの日と同じように沈んでいく、オレンジ色のまあるい夕日を見ながら、寂しそうに呟いた。

「ね、そういや、階段から転げた時、ケンタと初恋について話してたっていってたけど、何、話してたの?」

リョウは、ケンタも昔からリンのことが好きなの事を知っている。

「えとね、ケンタの初恋の人の話をしてて……」

リョウは、ぎょっとした。

「え!ケンタの初恋!……もしかして……リン、告白、されたとか……」

「……うん。ケンタの初恋の相手、私だったの」  

「それで?リンは、なんて返事したの?」

リョウは、緊張から心臓が、苦しくなる。

「……ケンタの事、友達として好きだから……って断って……そしたらケンタが……あっ!」

リンが、そこまで言うと、大きな黒目を見開いた。

「リン、どしたの?!」

リンは、眉を下げて涙を浮かべた。

「ケンタが……初恋は、実らないって本当だねって言ったの……だから……悲しくなって……私の初恋なんてどっかいっちゃえって思ったの……そしたら、本当に……初恋どこかに忘れちゃった。私の中から、居なくなっちゃったの」

リンの両目からは、ポロポロと小さな丸い粒が、とめどなく落っこちていく。