初恋わすれ

「もう、リン、困らせないでよ」

「もしかしたら、高いところの方が、見つけやすいかもしれないじゃん」

「あ、そういうこと」

リョウは、苦笑いした。リョウは、リンには内緒にしているが、高いところが苦手なのだ。

「ちょっと、待っててね」

「何が何でも私の大事な忘れ物、今日中に必ず取りにいかなくちゃ」

そうだ。リンはいつだって自分の意志をしっかりと持っていて、努力家で頑固で、最後まで諦めないのだ。

リョウは、意を決すると、リンのスカートの中をなるべく見ないようにジャングルジムを登っていき、リンの隣に座った。



「気持ちいいね。リョウ」

「確かに、気持ちいい」

地上から、少し高い所にいるだけで、頬を撫でていく風は、心地よい。

「こうやって、リンとジャングルジム登るの久しぶりだね」

「うん、私、悲しいことや落ち込む事があるとよく登ったなぁ」

ーーーーあれは、いつだっただろう。

泣きながら、ジャングルジムに登っていたリンを見つけたリョウは、リンの為に、なんとかジャングルジムをテッペンまで登り、リンにハンカチを差し出したことを思い出した。

そして、夕日が沈む頃、泣き止んだリンが、頬を膨らませながら、『甘いね』と、満面の笑みで、リョウを見つめたことを思い出す。