初恋わすれ

「リョウ、ありがとう」

リンは、照れたように笑うと、リョウの掌からイチゴミルクの飴を(つま)み、すぐに小さな口に放り込んだ。それを見てから、リョウは、リンに背中を向けてしゃがみ込んだ。

「リン、はい、どうぞ」

「え?リョウ?」

「その足じゃ歩くの痛いでしょ、飴舐め終わるまで、おんぶしてあげる」

「えと……恥ずかしい……」

顔だけ振り返れば、リンが、ピンク色に頬を染めている。

「小さい頃は、よく転んで擦りむいたリンをおぶって帰ったでしょ?早く」

カロン、コロンとリンが、飴玉を転がす音と共に、リョウの背中が、リンの体温であったかくなる。

月明かりに照らされて、いつもの帰り道は、影は二人分あるのに、今日は、一つに重なっている。

「あったかいね」

「だね」

リョウは、小さな頃よりも、ずっと重たくなったリンの温もりを確かめるように、ゆっくりゆっくり歩いていく。

その時、カロン、コロンと聴こえていた飴玉の音が、急にとまった。

「リン?」

リョウが、立ち止まると、リンが、こつんとリョウの背中に額を当てた。

「リン、どうかした?」

「……あった」

「へ?」

リンの鼓動が、リョウの背中を通して、とくん、とくんと早くなっていく。それに、応えるように、リョウの鼓動も速度を増していく。