興奮冷めやらぬ劇場を出て、わたしは帰路についた。




「限定グッズ買い損ねたな……」




外に出て数分歩いたところで、ようやくその事実に気が付く。

何ともわたしらしからぬ失態。

ブロマイド、恭くん引き当てるまで買い続けようと思ってお金たくさん用意してたのに。


幕が下りてから、何だか落ち着かない気持ちになって誰よりも先に出てきてしまった。




「やっぱりあの世界に未練があるのかな、わたし」




そんな独り言を呟いてみる。


……まさか、ね。

思い出してみなよわたし。あの世界は、ここから見えているような綺麗な場所じゃない。


それに、台本を覚えることができない今のわたしは、絶対に舞台に立つなんて無理だ。


わたしは静かに息をついて、前を向く。


──そのときだった。




「よかった、瑞紀ちゃん見つけた!」




そんな声と共に、後ろから走って誰かに背中から抱きしめられた。

それが誰かなんて声だけでわかりますとも。