その舞台に偶然、恭くんが出演していた。




「そこまで目立つ役じゃなかったけど、養成所で一緒だった子だっていうのはすぐに気が付いたの。わたしが養成所にいた頃の恭くんは、まだお世辞にも演技が上手い方ではなかったから、ものすごい成長にびっくりした」




全く演技を楽しもうとしない恭くんに腹が立って文句を言ったこともあった。心のどこかで、そんな恭くんにこの仕事は向いていないんじゃないかと思ってもいた。


それがどうだ。

天羽恭は、眩しいほどに立派な役者になっていた。




「恭くんの演技にものすごく感動した。で、気付いたの。自分がいたときは大人の汚い部分ばっかり目に入ったけど、……外から見るあの世界は、本当に美しかった」




この時をきっかけに、わたしはまた映画やドラマ、舞台を見られるようになった。

自分も再びあの世界に行きたいとは微塵も思わなかったけど、外側からあの美しい世界を見ることは楽しくて仕方なかった。




「わたしは恭くんが好き。本気で恋をしてる。ただのファンって気持ち以上の想いを抱いているの。……あの舞台を見たときからずっとね」