――……

幼稚園のいつだったか、細かいことは覚えていない。

ただ、その日が何かの発表会で、台詞を言わなくちゃいけなかった。

その台詞は、私が元から喋るのが苦手だったので短めに配慮されたいた。

それでも真っ白になって、隣に立つ男の子がこっそり耳打ちしてくれても喋れなかった。

何とか絞り出た言葉に躓いて、先が進まない。

頭の中で不安や恐ろしさがぐるぐる回って、残念ながら私はそこで終わりだった。

私の代わりに男の子が私の台詞を言ってくれたのだが。

だからその発表会の私はただ突っ立っていただけ。

特に何かすることもなく、壇上から降りたのだ。

先生と親からはお世辞にも「緊張しちゃったんだよね」と慰めの言葉がかけられた。

でも私は知ってる。

本当は裏で「病院に行ったほうがいいかもしれない」と辛い話が出ていたのを。

あの男の子のことも、顔は覚えているけれど名前までは思い出せない。

お礼も言ったか曖昧なところ。

……――