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1時間程の会合を終えた後、怜央は私を家の前まで送ってくれた。
「ただいまー」
「あ、姉ちゃんおかえり」
ドアを開けた途端、玄関まで届く生姜焼きの匂い。
その匂いに釣られるようにして、まずはキッチンへと顔を出す。
「志貴ごめんね。食事当番代わってもらっちゃって」
水瀬家では平日は志貴が、休日は私が食事を作ることになっている。
今日は土曜日。本来なら私が食事当番なのだが急遽、志貴に代わってもらった。
「いいって。俺はこのくらいしかできないし。それよりも変な要求とかされてないよな?番長に」
志貴は私の新しいバイトが暴走族と関わるものだと知っている。
けれど、その仕事内容は身の回りのお世話や食事の作り置きが主で家政婦のようなものだと伝えた。
本当は暴走族の元で働くことを隠しておきたかったが、他のバイトと違いスケジュールが不規則なこと、いつか怜央といることが志貴の耳にも入るかもしれないこと。
その2点を踏まえた上で、先に話しておいたほうが余計な心配をかけないと判断したのだ。



