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 それからというもの毎晩トオルはサチの部屋を訪ねてくるようになった。

 体を重ねなくても、一緒にいたいんだと言って共に料理をしてみたり。
 一緒に洗濯物を畳んだり。

 彼は徐々にサチの生活の一部になっていった。


「この部屋に俺以外の男の物があるの、なんか嫌」

 そう言ってトオルが使うかもと残しておいた元カレの私物は全部捨てられ、代わりにトオルのものが増えていく。

 恋人と言えないような間柄なのに、サチの部屋にはトオルがいるのが日常になっていった。


 トオルはサチにとって何なのかと聞かれたら、ただの同居人と答えるしかないだろう。
 体の関係はあっても、好きだなんだという事を口にしたことはないのだから。

(これって都合のいいセフレなんじゃ……)

 ふとした瞬間に考えてしまう。
 そして、こんなあやふやな関係で良いはずがない、と。

 だが、関係をハッキリさせて面倒がられてトオルが出て行ってしまったら?
 そう考えると彼に問うことも出来なかった。

 それほどに、今ではもうサチの心の大半がトオルで占められている。


 そうしてズルズルと真綿に包まれるような居心地のいい生活を続けてしまっていた。